日本の半導体株を代表するアドバンテストとレーザーテック。「名前はよく聞くけれど、具体的に何が違うの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。この2社、同じ半導体製造装置メーカーでありながら、担当する工程や技術領域は全く異なります。
アドバンテストは、製造プロセスの要所で半導体が設計通りに動くかを判定し、品質を保証する「テスト工程の世界的リーダー」。対するレーザーテックは、回路の設計図に欠陥がないかを光で調べる「前工程(検査)の独占企業」です。
本記事では、両社の役割や市場シェア、北海道・千歳のラピダス計画への影響までをわかりやすく解説します。
アドバンテストとレーザーテックの違い

半導体業界を牽引するアドバンテストとレーザーテックは、どちらも製造装置メーカーとして世界的に有名な企業です。しかし、両者が担当する役割や得意とする技術領域には明確な違いが存在します。
アドバンテストは完成したチップが正常に動くかを確認するテストに強みを持ち、レーザーテックは回路の原板に欠陥がないかを光で調べる検査に特化しています。
役割の違いは「テスト(良否判定)」か「検査(欠陥発見)」か
アドバンテストが主力とするのは「半導体テスタ」と呼ばれる装置であり、これは完成した半導体デバイスに電気信号を送り、その反応を基準データと比較して「良品」か「不良品」かを判定する役割を担います。
いわば、出荷前に行われる「最終試験の試験官」のような存在です。一方、レーザーテックが得意とするのは「マスク検査装置」で、これは半導体の設計図が描かれたフォトマスクという板に傷やゴミがないかを光を使って確認するものです。
こちらは製造プロセスの途中でミスを見つける「高度な顕微鏡」に近い役割を果たしています。
テスト工程を牽引するアドバンテストと前工程の検査を独占するレーザーテック
半導体製造は、材料を加工して回路を作る「前工程」と、チップを切り出して組み立てる「後工程」に分かれます。
アドバンテストは、前工程の最後に行う「ウェーハテスト」から、組み立て後に行う「パッケージテスト」まで幅広いテスト工程を担っており、世界の半導体テスタ市場で58%(2023年時点)のシェアを占める圧倒的なポジションを築いています。
対して、レーザーテックは回路を焼き付ける準備段階である「前工程」のさらに上流、フォトマスク関連の装置で市場をリードしています。
このように、同じ装置メーカーでも活躍する舞台が「入り口」と「出口」で分かれている点が大きな特徴です。
投資・就職視点で見る「世界シェア」と「営業利益率」の凄み
両社とも、一般的な製造業では考えられないほど高い収益性を誇るのが魅力です。アドバンテストは2024年度第2四半期において、営業利益率33.4%という製造業としては異例の高水準を記録しており、価格競争に巻き込まれない技術的独占力を持っています。
レーザーテックは2025年6月期の実績では、売上高2,514億77百万円、営業利益1,228億43百万円を達成。2026年6月期の通期予想においては、売上高2,200億円、営業利益1,000億円と上方修正しており、非常に高い利益水準を維持する見通しです。
両社とも各分野で世界シェアの大部分、あるいは特定技術で独占に近い状態を維持しており、投資家からも熱い注目を浴び続けています。
| 比較項目 | アドバンテスト | レーザーテック |
|---|---|---|
| 主な役割 | テスティング(動作確認) | インスペクション(欠陥検査) |
| 製造工程 | テスト工程(前工程のウェーハ試験、後工程のパッケージ試験) | 前工程(マスク・ウェハ検査) |
| 代表的な装置 | SoCテスタ、メモリ・テスタ | EUVマスク検査装置 |
| 強みの源泉 | 高い並列測定能力と熱制御技術 | 世界で唯一実用化したEUV検査光 |
半導体産業を支える2社の重要性と北海道への影響
現在、日本の産業界において半導体は「戦略物資」として位置づけられており、その製造を支える装置メーカーの重要性がかつてないほど高まっています。
特に北海道では次世代半導体の量産を目指す大きな動きがあり、アドバンテストやレーザーテックが提供する技術がプロジェクトの成否を分ける鍵を握ると言っても過言ではありません。
なぜ今、この2社が日本の「国策」において不可不可欠なのか
デジタル社会の基盤となる半導体は、経済安全保障の観点から自国内での確保が急務となっています。アドバンテストのテスタやレーザーテックの検査装置は、半導体の「品質」と「歩留まり(良品が取れる割合)」を担保するために絶対に欠かせない存在です。
これらの装置がなければ、どんなに優れた設計ができても、正しく動作する製品を安定して市場に送り出すことはできません。そのため、日本が再び半導体大国として復活するための「技術的支柱」として、国を挙げて支援する重要な立ち位置にあります。
北海道・千歳「ラピダス」の成功を左右する最先端装置の供給
北海道千歳市で進められているRapidus(ラピダス)のプロジェクトでは、世界最先端となる2ナノメートル世代の半導体生産を目指しています。この極めて微細な回路を焼き付けるには「EUV露光」という技術が必須であり、レーザーテックが提供するEUV対応の検査装置がなければ製造ラインそのものが成立しません。
また、完成した超高性能チップを正確にテストするためには、アドバンテストの高度なテスティング・プラットフォームも不可欠となります。北海道が世界の半導体拠点になるためには、これら2社の装置をいかにタイムリーに導入し、使いこなすかが決定的な要因となります。
国内外の投資家が日本の装置メーカーに熱視線を送る理由
世界中の投資家がアドバンテストやレーザーテックに注目するのは、替えの利かない「技術の壁」が非常に高いからです。例えばレーザーテックのEUVマスク検査装置は、現時点で実用化している唯一の企業とされており、競合他社が簡単に追随できるレベルではありません。
アドバンテストも、AI向けの複雑な半導体テストにおいて圧倒的なシェアを誇り、リカーリングビジネス(保守やサービスによる継続収入)の比率を高めることで、景気変動に強い安定した収益構造を構築しています。
こうした「技術の独占性」と「盤石な財務基盤」が、将来の成長を期待させる大きな要因です。
半導体の品質を担保する要|アドバンテストの強みと特徴
アドバンテストのテストシステムは、製造された半導体が設計通りに動くかを厳しくチェックし、世の中の「安全・安心・心地よい」を支える品質保証の要としての役割を果たしています。
スマートフォンの脳にあたるチップから、膨大なデータを処理するAI用サーバーの部品まで、私たちの身の回りにあるあらゆるデジタル機器の信頼性は、この「テスタ」という装置によって守られています。
スマホからAIまで、正しく動くかを確認する「テスタ」の技術
半導体テスタは、人間の目では見えないほど微細な電気のやり取りを瞬時に解析します。例えば、AIの学習に使われる高性能なGPUは、内部でチップ同士が複雑に繋がっていますが、アドバンテストの装置はこれらをまとめて一度に高速でテストする能力を持っています。
また、テスト中にチップが発熱して故障するのを防ぐために、温度を1度単位で細かく制御する「アクティブ サーマル コントロール(ATC)」という独自の熱制御技術も備えており、歩留まり向上に大きく貢献しています。
競合テラダインと世界を二分する圧倒的な市場支配力
世界の半導体テスタ市場は、日本のアドバンテストと米国のテラダインの2社で約8割のシェアを分け合う「複占」状態にあります。特にアドバンテストは近年、SoC(システム・オン・チップ)向けテスタでのシェアを徐々に伸ばしており、市場を強力にリードしています。
一度テスタを導入すると、顧客である半導体メーカーは開発環境や評価手法をその装置に合わせて構築するため、他社製への乗り換えコストが非常に高くなります。この「スイッチング・コスト」の高さが、安定した高い収益を生み出す強力な参入障壁となっています。
複雑化するHPC(ハイ パフォーマンス コンピューティング)向けでの優位性
生成AIの普及により、計算能力が極めて高いHPC向け半導体の需要が急増しています。これらのチップは構造が3D積層化されるなど非常に複雑で、テストの難易度も飛躍的に上がっています。
アドバンテストは、次世代メモリであるHBM(高帯域幅メモリ)のテストにおいても圧倒的な強みを持ち、積層されたメモリ一つひとつの良否を正確に見極める技術で、競合に対する優位性を確立しています。まさに「複雑であればあるほど輝く」のがアドバンテストの技術力と言えます。
「世界唯一の光技術」レーザーテックの強みと特徴
レーザーテックは、横浜に本社を置く精鋭集団であり、光を操る独自技術によって世界中の半導体メーカーを支えています。特に、最先端の回路製造に欠かせない特定の装置においては、世界シェアの大部分を独占するほどの影響力を持っており、その技術は現代の魔法とも称されるほど高度です。
最先端のEUV露光に欠かせない「マスク検査装置」の独占状態
半導体の回路を焼き付ける際、設計図の役割を果たすのがフォトマスクです。現在、最も微細な加工ができる「EUV露光」という工程において、このフォトマスクの欠陥を光で検査する装置を製品化できているのは、世界でレーザーテックだけとされています。
この装置がなければ、設計図にミスがあっても気づかずに不良品を作り続けてしまうことになります。最先端半導体を製造するメーカーにとって、レーザーテックの装置は「喉から手が出るほど欲しい」不可欠なインフラなのです。
競合不在?他社が追随できない高い技術障壁と開発スピード
レーザーテックが他社の追随を許さない理由は、創業以来培ってきた「光応用技術」の蓄積にあります。特定の波長の光を安定して制御し、ナノメートル単位の微細な傷を見つけ出す技術は一朝一夕で真似できるものではありません。
また、「毎年一つは世界初の新製品を開発する」という精神のもと、顧客のニーズを先取りしてスピーディーに開発を進める文化も強みです。大手メーカーが参入を検討する頃には、すでに市場を席巻しているという「スピード感」が独占状態を支えています。
製造業として驚異的な利益率の源泉
同社の大きな特徴は、研究開発と設計にリソースを集中させることで生み出される極めて高い付加価値にあります。製造業としては驚異的な営業利益率を誇り、2025年6月期の実績では営業利益率が約48.9%に達しています。
高い技術力を高い利益に直結させる、理想的なビジネス構造をもつ企業です。
私たちの未来をどう変える?2社が描く10年後の展望
アドバンテストとレーザーテックが提供する技術は、単なる産業用装置の枠を超え、10年後の私たちの暮らしをより豊かで安全なものへと変える基盤になります。
デジタル化が加速する世界において、これらの企業の進化は私たちの未来予想図そのものを書き換えていく可能性を秘めています。
自動運転や生成AIの進化を支える「品質保証」の高度化
10年後、完全自動運転車が街を走り、生成AIが個人のパートナーとして寄り添う社会が実現しているかもしれません。こうした高度なAIを動かすには、今の何百倍もの計算をミスなくこなす、超高性能で信頼性の高い半導体が必要です。
アドバンテストが提唱する「テストの自動化(AutomationofTest)」や、データ解析プラットフォーム「ACS」は、半導体の品質管理を極限まで効率化し、不良品ゼロの社会を支える柱となります。2社の技術革新が、命に関わるシステムの「安心」を裏側で支え続けるのです。
北海道・ラピダス計画の成功を左右する技術的支柱
現在、日本の「半導体復活」の切り札として、北海道でRapidus(ラピダス)のプロジェクトが進められています。
ここにアドバンテストやレーザーテックが誇る世界トップクラスの技術が導入され、最先端の「製造・検査・テスト」体制が構築されることが期待されています。特にレーザーテックの最先端の検査装置は代替が難しく、日本が再び半導体拠点として復活するための強力な武器となります。
デジタル社会のインフラとして成長し続ける半導体製造装置市場
半導体はもはや、水や電気と同じように「社会のインフラ」となりました。今後、あらゆるモノがインターネットに繋がるIoT化がさらに進むことで、半導体の需要は右肩上がりで成長し続けることが予想されます。
アドバンテストやレーザーテックが主戦場とする製造装置市場も、単なる機械の販売から、より付加価値の高いビジネスへと進化していくでしょう。レーザーテックにおいても、納入済み製品のメンテナンスや消耗品交換に関わる「サービスビジネスの拡大」を目標に掲げています。
デジタル社会が続く限り、この2社は「主役を支える最強の裏方」として輝き続けます。
装置の役割の違いを理解して日本の半導体産業の成長に注目しよう
アドバンテストとレーザーテックは、それぞれ「テスト」と「検査」という異なるアプローチで、世界の半導体品質を支える日本が誇るツートップ企業です。
アドバンテストは品質保証の要として製品の動作を保証し、レーザーテックは前工程の目として製品の動作を保証し、レーザーテックは前工程の目として超微細な欠陥を捉えることで、共にデジタル社会の信頼性を築き上げています。
最先端の技術も、紐解いてみれば私たちの生活に直結しています。北海道で半導体革命が進む今、こうした知識を知っておくことは、未来を読み解く大きなヒントになるはずです。
世界をリードする日本の技術が、私たちの暮らしをどう変えていくのか、これからも一緒に注目していきましょう。







コメント