「SCREEN(スクリーン)」という企業名を聞いて、その凄さを即座に説明できる方は少ないかもしれません。しかし、私たちが日常的に手にしているスマートフォンやパソコンの進化を語るうえで、この企業の存在を無視することはできません。
SCREENは、半導体製造に不可欠な「洗浄装置」の分野で世界シェアの大部分を占める、日本が世界に誇るトップクラスの装置メーカーです。
本記事では、京都の印刷所から始まった同社が、なぜ世界中の巨大IT企業から必要とされているのか、その理由を「3つの結論」としてわかりやすく紹介します。
SCREENホールディングスが世界から必要とされる「3つの結論」

SCREENホールディングス(以下、SCREEN)は、現代社会に欠かせない電子機器の進化を支える、日本を代表する装置メーカーです。一般消費者には馴染みが薄い名前かもしれませんが、半導体業界ではその存在を知らない者はいません。
京都に本社を置くこの企業が、なぜ世界中の巨大IT企業や半導体メーカーから頼りにされているのか、その理由は主に3つのポイントに集約されます。
半導体洗浄装置で世界シェアNo.1を誇る圧倒的な実績
SCREENの最大の特徴は、半導体洗浄装置(はんどうたいせんじょうそうち)という分野で、市場の大部分をリードしている点です。半導体洗浄装置とは、目に見えないほど小さなゴミを取り除く、いわば「究極の洗濯機」のような存在です。
世界シェアは約40%に達しており、特に「枚葉式(まいようしき)」と呼ばれる、ピザの生地のような円盤状のシリコンウエハーを1枚ずつ丁寧に洗う方式では、世界トップクラスのシェアを維持し続けています。
| 装置の種類 | 機能の概要 | 世界シェア |
|---|---|---|
| 枚葉式洗浄装置 | ウエハーを1枚ずつ高速回転させて洗う方式 | 世界トップクラス |
| バッチ式洗浄装置 | 複数枚をまとめて薬液に浸して洗う方式 | 高いシェアを維持 |
京都の印刷所から始まった「思考展開」という独自の進化
SCREENのルーツは、1868年に京都で創業した石田旭山印刷所(いしだきょくざんいんさつじょ)にあります。印刷技術で培った「光を操る技術」や「細密な加工技術」を、時代に合わせて変化させてきた歴史が強みです。
この姿勢は「思考展開(しこうてんかい)」が「創業の精神」として受け継がれており、既存の技術を全く別の分野へ応用する能力に長けています。印刷機から始まった技術が、現在のスマートフォンの中身を作る装置へと繋がっているのです。
私たちのスマホやPCの性能を裏側で決定づける技術力
スマートフォンやパソコンが年々「より小さく、より高性能」になる背景には、SCREENの技術が深く関わっています。半導体の回路は、ナノメートル(1メートルの10億分の1)という、1円玉の直径の数百万分の1という極限の細かさで描かれます。
この微細な世界では、わずかな汚れが致命的な故障の原因となります。SCREENが提供する高度な洗浄技術や、特殊な液体を均一に塗る技術がなければ、最新のAIチップや高精細なディスプレーは実現できません。
なぜ今、SCREENの技術が北海道や日本の未来に欠かせないのか
現在、日本国内では半導体の自国生産に向けた動きが加速しており、その中心地として北海道が注目を集めています。
SCREENの技術は、単なる一企業の製品という枠を超え、日本の経済安全保障や地域の雇用を支える重要なインフラとしての側面を持ち始めています。
次世代半導体プロジェクト「ラピダス」とSCREENの深い関係
北海道千歳市で進められている次世代半導体の製造プロジェクト「Rapidus(ラピダス)」において、SCREENは極めて重要な役割を担うとされています。ラピダスが目指す2ナノメートルという最先端のチップ製造には、これまでにないほど高度な洗浄プロセスが求められます。
SCREENは、ベルギーの研究機関であるimecや米国IBM社などと共同で次世代技術の開発を進めており、その知見が北海道の地で形になろうとしています。
経済安全保障の鍵を握る「日の丸半導体装置」の底力
半導体は、軍事やAI、自動運転など、国の競争力を左右する戦略物資です。製造装置を自国で開発・供給できる能力を持つことは、他国に依存しない安定した産業基盤を築くことに直結します。
SCREENのような世界シェアを持つ装置メーカーが日本にあることは、日本の発言力を強める大きな武器となります。経済安全保障の観点からも、同社の技術力は「日本の砦」としての価値を世界に示しています。
北海道が世界の半導体拠点になるために必要な洗浄技術
北海道が世界の半導体拠点として発展するためには、工場を建てるだけでなく、そこで使われる装置のメンテナンスや技術支援を行うエコシステムが必要です。SCREENは、彦根事業所などの大規模な開発拠点で培ったノウハウを、全国の製造現場へ展開しています。
北海道においても、こうした高度な装置を扱う技術者が集まることで、地元の雇用創出や教育水準の向上といった、地域経済の活性化が期待されています。
汚れひとつですべてが台無し?「洗浄」が半導体製造の命である理由
半導体製造の工程は数百にも及びますが、そのうちの約3割が「洗浄」に関連する工程だと言われています。
なぜこれほどまでに洗うことが重要視されるのか、その裏側には、私たちが普段生活している環境とは全く異なる「超微細な世界」の厳しさがあります。
ナノレベルのゴミも許さない「究極の洗濯機」の役割
半導体の回路は、インフルエンザウイルスのサイズよりもはるかに細かく設計されています。そのため、私たちが普段「きれい」と感じている空気中に漂うわずかな埃でも、回路の上に落ちれば巨大な障害物となり、電気が通らなくなります。
SCREENの洗浄装置は、こうした目に見えないナノレベルの粒子を、化学薬品や純水、物理的な力を組み合わせて完璧に取り除きます。これはまさに、手術室よりもさらに清潔な環境で行われる究極の作業です。
15,000台以上の出荷が証明する世界中の工場からの信頼
SCREENの半導体洗浄装置は、これまでに累計で15,000台以上が出荷されています。この数字は、世界中の半導体工場で同社の装置が標準機として選ばれている証拠です。
24時間365日稼働し続ける過酷な工場環境において、故障せず、常に一定の洗浄品質を保ち続けることは容易ではありません。長年の実績に裏打ちされた信頼性が、IntelやTSMCといった世界的な半導体メーカーから選ばれ続ける最大の理由です。
水の使用量を抑え地球環境を守る、最先端の環境対応技術
大量の水を必要とする洗浄工程において、SCREENは環境負荷の低減にも注力しています。例えば、従来の装置よりも少ない水や薬液で同等の効果を得る技術や、排水を浄化して再利用するシステムの開発を進めています。
| 薬液の最適化 | 必要な場所にだけピンポイントで薬品を塗布し、無駄を削減 |
|---|---|
| 節水技術 | 特殊なノズルを用いて、洗浄力を維持しながら水の使用量を大幅に抑制 |
| 電力削減 | 待機時の消費電力をカットし、大規模工場のCO2排出量削減に貢献 |
印刷技術がスマホに化けた|「思考展開」が生んだ驚きの応用力
SCREENの凄さは、半導体だけにとどまりません。創業当時から続く「印刷」というコア技術を、次々と新しい分野へと広げてきた柔軟性こそが、この企業の真骨頂です。
写真製版から半導体へ|技術を横展開するSCREENの伝統
かつての印刷工程では、写真をフィルムに焼き付ける「写真製版(しゃしんせいはん)」という技術が使われていました。SCREENはこの時に磨いた「光で細かな絵を描く技術」を、半導体の回路を焼き付ける技術へと転用しました。
一見、印刷と半導体は無関係に見えますが、「板の上に細かなパターンを正確に再現する」という本質は共通しています。この伝統的な横展開こそが、SCREENの多角的な事業構成を支えています。
液晶ディスプレーやプリント基板を支える「塗る・描く」技術
私たちの身近にあるテレビやスマートフォンのディスプレー製造にも、SCREENの技術が欠かせません。大型のガラス基板に特殊な液体を1マイクロメートル(1,000分の1ミリ)以下の薄さで、ムラなく均一に塗る「コータ・デベロッパー」という装置は、世界中で高いシェアを持っています。
まるで広大なスケートリンクの上に、一滴の水の狂いもなく液体を広げるような、極めて精密な職人技が機械によって実現されています。
ライフサイエンス分野へ~薬の製造やがん研究にも広がる可能性
近年、SCREENは医療や創薬の分野にも進出しています。半導体で培った「画像処理技術」を使い、生きた細胞を高速でスキャンして分析する装置を開発しました。
| 高速細胞スキャナー | がん細胞の増殖具合を画像で捉え、新薬の効果を素早く判定 |
|---|---|
| 錠剤印刷機 | 薬の表面に、品名などを高速かつ鮮明に印刷 |
| 再生医療支援 | iPS細胞などの培養状況を自動で監視し、品質を一定に保つサポート |
こうした挑戦は、まさに「思考展開」の精神が現代の最先端科学と結びついた結果と言えます。
10年後の私たちの生活はSCREENの技術でどう変わるか
SCREENの技術は、未来の社会を形作る鍵となります。10年後の私たちの生活が、より便利で持続可能なものになるために、どのような変化をもたらすのかを予測してみましょう。
5G・AI社会を加速させる次世代半導体パッケージの進化
自動運転や高度なAI対話が当たり前になる未来では、情報の処理速度が飛躍的に向上する必要があります。これに対応するため、半導体は複数のチップを積み木のように重ねる「3Dパッケージ技術」へと進化しています。
SCREENは、複雑な構造を洗浄する洗浄装置と、正確に回路を接続するための露光装置『DW-3100』などを開発しており、通信の高速化や省電力化を影で支えています。
燃料電池や水素エネルギー。脱炭素社会を支える製造装置
環境問題への対策として、水素エネルギーの活用が期待されています。SCREENは、燃料電池の心臓部となる部品を作る装置の開発にも乗り出しています。
ディスプレー製造で培った「ロール状の膜に薄く均一に塗る技術」を応用し、低コストで高性能な燃料電池を大量生産できる体制を整えようとしています。これにより、北海道の大地を走るバスやトラックが、CO2を出さないクリーンなエネルギーで動く未来が現実味を帯びてきます。
北海道の雇用と経済を豊かにする「半導体エコシステム」の展望
北海道に最先端の半導体工場が定着すれば、10年後には世界中から優秀なエンジニアが集まる「シリコンアイランド」としての地位を確立しているはずです。SCREENの装置を使いこなす地元の若者が増え、新しい関連企業が次々と誕生することで、地域全体の所得水準も向上します。
| 将来の変化 | 具体的なイメージ |
|---|---|
| 雇用の質の向上 | 世界レベルの技術を扱う高年収な職種が北海道に定着 |
| 教育の活性化 | 地元の大学や高専で、最先端の半導体工学が学べる環境が充実 |
| 経済の循環 | 工場周辺に住宅や商業施設が並び、活気ある街並みが形成される |
SCREENのすごさを知って日本の半導体産業を応援しよう
北海道で半導体革命が進む今、SCREENのすごさを知ることも重要です。京都の印刷所から始まった挑戦が、今や北海道の大地、そして世界の未来を照らす光となっています。
私たちが毎日使っているスマートフォンの画面越しに、SCREENのような日本企業が支える「目に見えないすごさ」を感じてみてください。
