「苫東地域(苫小牧東部産業地域)に3500億円規模のデータセンターができる」「ソフトバンクも着工した」といったニュースを見て、驚いた方も多いのではないでしょうか。
「なぜ苫小牧なの?」「私たちの生活にどう関わるの?」と、詳しい内容が気になる方もいるでしょう。
本記事では、2027年春に向けて進化する苫小牧のAIデータセンター計画を、専門用語を使わずに整理してみました。北海道がデジタル社会の主役になる未来を、一緒にのぞいてみましょう。
2027年春に進化!苫小牧に誕生する「AIデータセンター」の最新ニュース

北海道の苫小牧市が、最先端技術が集まる「AIの拠点」として世界中から注目されています。2026年から2027年にかけて、これまでの常識を覆す規模のデータセンターが次々と稼働する計画が進んでいるからです。
データセンターとは、インターネット上の膨大な情報を処理するためのコンピューターが集まった、いわば「データの巨大な保管庫兼計算室」のことです。
苫小牧では、この施設が地域経済や私たちの未来を大きく変えようとしています。最新の動向を詳しく見ていきましょう。
そもそも「データセンター」って何をする場所?
データセンターは、私たちが普段スマートフォンやパソコンで使っているサービスの「裏側」を支える重要な施設です。
形状としては、巨大な倉庫のような建物の中に、冷蔵庫ほどの大きさの棚(サーバーラック)が何百台も並んでいる姿をイメージしてください。
この棚の一つひとつに、超高性能なコンピューターである「サーバー」がぎっしりと詰め込まれています。役割は大きく分けて3つあります。
- データの保存:写真、動画、SNSの投稿などを安全に保管します。
- 情報の処理:検索エンジンの結果を表示したり、生成AIが回答を作ったりするための計算を行います。
- 通信の配信:インターネットを通じて、世界中に素早く情報を届けます。
いわば、現代社会のあらゆるデジタル活動を支える「知識の心臓部」といえる存在です。
2027年春に何が起きる?注目の「苫小牧AIファクトリー」計画
苫小牧市の「苫東地域」では、AI Tech Tomakomai株式会社(ATT)が進める「苫小牧AIファクトリー」計画が本格的に動き出しています。このプロジェクトは、単なるデータの保管場所ではなく、AI(人工知能)の学習や計算に特化した専用施設を建設するものです。
2025年11月に着工しており、2026年春には10MW(メガワット)の規模で稼働を開始します。さらに、2027年春には受電容量を50MWまで増設する予定です。
投資総額は約3,500億円にのぼり、米国の半導体大手エヌビディア製の最新鋭AIチップを導入します。これにより、従来のデータセンターよりもはるかに高速で複雑な計算が可能になり、アジアにおけるAI産業の中核拠点となることが期待されています。
ソフトバンクも参戦!苫小牧が日本最大級のAI拠点になる理由
ATTの計画に加え、通信大手のソフトバンクも苫小牧市での大規模プロジェクトを推進しています。
ソフトバンクが建設する「北海道苫小牧AIデータセンター」は、敷地面積が約70ヘクタールという広大なものです。これは東京ドーム約15個分に相当する圧倒的なサイズ感です。最終的な受電容量は300MW超を目指しており、完成すれば日本最大級のデータセンターとなります。
これほどまでに苫小牧に注目が集まるのは、土地の広さだけでなく、大規模な電力を安定して供給できる基盤が整っているためです。政府からも、東京や大阪に集中しているデータ拠点を地方に分散させる重要なプロジェクトとして、多額の補助金が交付されるなど、国を挙げた支援が行われています。
私たちの生活はどう変わる?AIデータセンターがもたらすメリット
データセンターという巨大な施設ができることで、私たちの日常や地元の暮らしにはどのような変化が訪れるのでしょうか。
自分たちにとって直接的な関係のない、専門的な施設のように思えるかもしれません。しかし、実際にはスマートフォンの使い心地から地域の経済状況、そして教育の機会まで、非常に多岐にわたるメリットをもたらします。
北海道がデジタル社会の最前線に立つことで得られる、具体的な3つの変化について解説します。
スマホや生成AIがもっと賢く、もっと身近に便利になる
データセンターが私たちの近くにできる最大のメリットは、インターネットサービスの反応速度が向上し、より高度な機能が使えるようになることです。
例えば、現在話題の「生成AI」との会話がよりスムーズになったり、複雑な画像や動画の編集が瞬時に終わるようになったりします。データセンターが近くにあることで、情報の往復にかかるわずかな時間のズレ(遅延)が解消されるためです。
また、自動運転技術の精度向上や、リアルタイムでの翻訳機能の進化など、AIが私たちの暮らしを直接助けてくれる場面が格段に増えていきます。
北海道の経済が動く!新しい仕事やチャンスが生まれる期待
数千億円規模の投資が行われるデータセンターの建設は、北海道全体の経済を大きく活性化させます。
施設の建設に関わる地元の建設業者や電気工事業者はもちろん、完成後も設備のメンテナンスや警備、運営を支えるITエンジニアなど、多様な雇用が生まれます。
データセンターを運営するためには大量の電気や水が必要になるため、関連するエネルギー産業の成長も期待できるでしょう。
最新のIT基盤がある場所に惹かれて、関連するソフトウェア開発企業やスタートアップ企業が集まってくる「産業の集積」が起き、新しいビジネスチャンスが次々と生まれる可能性を秘めています。
地元の学生も注目!「デジタル人材育成センター」で学べる未来
ATTのプロジェクトでは、施設内に「デジタル人材育成センター」の開発も検討されています。地元の子どもたちや学生が、世界最先端のAI技術やプログラミングを学べる場であり、地元の教育機関と連携し、AIを使いこなすためのリテラシー教育が行われる予定です。
これまで、最新のITスキルを学ぶためには都市部へ出る必要がありましたが、これからは苫小牧にいながら世界水準の知識に触れることができます。地元の若者が次世代のITリーダーとして活躍できる環境が整うことは、将来のキャリア選択において非常に大きなメリットとなります。
なぜ「苫小牧」なの?世界が注目する3つの優れたポイント
データセンターを建てる場所として、なぜ日本全国の中から苫小牧が選ばれたのでしょうか。そこには、コンピューターを効率よく動かすために必要な「自然の恵み」と「充実したインフラ」という、他の地域にはない圧倒的な優位性があります。
世界的な企業が北海道、特に苫小牧に熱視線を送る理由を、3つのポイントに絞って詳しく紐解いていきます。
雪が少なくて涼しい!サーバーを冷やすのに最適な「天然の冷蔵庫」
データセンターの中にある大量のサーバーは、24時間365日フル稼働しているため、まるで巨大なストーブのように猛烈な熱を発します。この熱を放置すると精密機器が故障してしまうため、常に冷やし続ける必要がありますが、そのための空調電力は膨大なコストになります。
苫小牧は年間を通じて気温が低く、特に夏場でも涼しいため、外気を取り入れるだけで効率的にサーバーを冷やすことができます。
また、北海道の中でも降雪量が少ないため、建物の維持管理がしやすく、雪による交通障害のリスクも低いという点が、安定稼働を求める企業にとって大きな魅力となっています。
土地も水もたっぷり!巨大な施設を建てるための最高の環境
データセンターは、数千台から数万台のサーバーを設置するため、広大な敷地を必要とします。苫小牧の臨空柏原地区を含む苫東地域は、日本最大級の工業団地であり、拡張性の高い広大な土地が確保されています。
さらに、最近のサーバー冷却技術では「水」を使って冷やす「液冷方式」も普及しており、安価で豊富な工業用水が使える苫小牧の環境は、次世代のデータセンター建設にうってつけです。
平坦で強固な地盤が広がっているため、巨大な建物を建てる際のコストも抑えられ、地震などの自然災害リスクも比較的低いと評価されています。
地球にやさしい!北海道の豊かな「再生可能エネルギー」を活用現代のデータセンターには、環境への配慮(GX:グリーントランスフォーメーション)が強く求められています。
北海道は、風力発電や太陽光発電といった「再生可能エネルギー」のポテンシャルが日本で最も高い地域です。特に石狩から苫小牧にかけてのエリアは、再エネの供給網が整備されつつあります。
ソフトバンクの計画では、道内の再生可能エネルギーを100%利用する「地産地消型」の運用を目指しています。CO2を排出しないクリーンな電力でAIを動かすことは、企業の価値を高めるだけでなく、地球全体の環境を守ることにもつながります。
AI Tech Tomakomaiとソフトバンク、2つの大きなプロジェクトの違い
苫小牧で進んでいる2つのプロジェクトは、どちらもAIに関わるものですが、その特徴や得意分野には明確な違いがあります。
それぞれの役割を知ることで、苫小牧がどのように多機能なデジタル拠点へと進化していくのかが見えてきます。また、隣町の千歳市で進む半導体工場「ラピダス」との関係についても触れておきましょう。
AI Tech Tomakomai:最新チップを積んだ「AIファクトリー」
AI Tech Tomakomai(ATT)が手掛ける「AIファクトリー」は、その名の通り「AIを製造・加工する工場」のような役割を果たします。
大きな特徴は、エヌビディア社の最新鋭GPU(画像処理半導体)を搭載している点です。これにより、生成AIの「学習」と呼ばれる、膨大なデータから知識を作り出す作業を驚異的なスピードで行えます。
また、従来のビル型の建物ではなく「モジュール型コンテナ」を採用しています。これは、あらかじめ設備を整えたコンテナを並べる方式で、建設期間を大幅に短縮し、需要に合わせて素早く設備を増設できる柔軟性を持っています。
ソフトバンク:日本最大級の広さを誇る「Brain Data Center」
ソフトバンクが目指すのは、社会のあらゆる活動を支える「次世代のインフラ」としての巨大な拠点です。
「Brain Data Center(脳のデータセンター)」という構想を掲げ、日本のデジタル情報の処理を東京や大阪から分散させる受け皿となります。ATTが「計算の鋭さ」を重視しているのに対し、ソフトバンクは「規模の大きさと安定性」に強みがあります。
自社の通信網と直結させることで、日本全国のユーザーが低遅延でAIサービスを利用できる環境を整えます。まさに、デジタル社会の土台となる巨大な「基地」を作るプロジェクトといえます。
ラピダスとも連携?千歳・苫小牧エリアが「ハイテクの街」へ
苫小牧のデータセンター群は、千歳市に建設されている次世代半導体工場「ラピダス」とも深い関わりがあります。
ラピダスが作る最新の半導体は、AIデータセンターで使われるサーバーの心臓部になります。つまり「半導体を作る工場(千歳)」と「その半導体を使って計算する拠点(苫小牧)」が隣接することで、世界でも珍しい「ハイテク産業のサイクル」がこのエリアに誕生します。
この相乗効果により、世界中のIT企業が北海道に注目し、エンジニアや研究者が集まる「北海道版シリコンバレー」のような街へと進化していくことが期待されています。
10年後の北海道はどうなる?データセンターが創る新しい未来
データセンターの建設は、単なる一過性のブームではなく、北海道の10年後、20年後の姿を決定づける大きな転換点となります。
これまでの北海道といえば、農業や観光が中心の「食と遊びの宝庫」というイメージが強かったかもしれません。しかし、これからはそこに「情報の宝庫」という新しい顔が加わります。
たちの故郷がどのように世界とつながっていくのか、その未来像を描いてみましょう。
東京に頼らない!北海道が日本の「データの心臓部」になる日
現在、日本のデータセンターの約8割は東京と大阪に集中しています。これは、もし大地震などの災害が起きた場合、日本のデジタル機能が停止してしまうリスクを抱えているということです。
北海道、特に苫小牧に大規模なデータセンターが集まることで、日本全体のデジタル機能を支える「バックアップ」としての役割を果たせるようになります。10年後には、東京の負担を分散させ、北海道が日本のデータを守り、処理する「第2の心臓」として機能しているはずです。
世界中からトップ企業が集まる「アジアの中核拠点」を目指して
冷涼な気候と豊富な再エネを持つ苫小牧は、海外のIT企業にとっても非常に魅力的な場所です。
実際に、ATTのプロジェクトにはシンガポールの企業も参画しており、すでに国際的な広がりを見せています。最新のAI基盤が整うことで、GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)のような巨大企業や、世界を変えるような新しいベンチャー企業が苫小牧を拠点に選ぶ未来も十分に考えられます。
北海道がアジアにおける「計算能力の供給基地」になれば、海外からの投資が絶えず、国際色豊かなハイテク都市へと変貌を遂げているでしょう。
私たちの暮らしを支える「次世代の社会インフラ」としての役割
最後に忘れてはならないの、データセンターは水道や電気と同じように、私たちの「生活インフラ」になるという点です。
10年後の世界では、AIは空気のような当たり前の存在になっています。健康管理をしてくれるAI、家事を助けてくれるロボット、最適な移動ルートを教えてくれる交通システム。これらすべてが、苫小牧のデータセンターで計算された情報によって動いています。
大規模なデータセンターが地元にあることは、私たちが最新の恩恵を最も早く、最も安定して受けられることを意味します。北海道は、日本で一番「未来の暮らし」を実感できる場所になっているかもしれません。
苫小牧のAIデータセンターに不可欠「エネルギーのベストミックス」
2027年春、苫小牧のAIデータセンターが整備されている計画について解説しました。北海道で半導体やAIの革命が推し進められているなかで、伝えられた新たなニュースです。
しかし、この「デジタルの未来」を実現するためには、避けては通れない高いハードルがあります。 シンクタンクの試算によると、ラピダスや次々と進出する大規模データセンター群が稼働することで、北海道全体の電力需要は、今後10年間で現在より約11%も増加すると予測されています。
この巨大なエネルギーを、果たしてどのように賄うのでしょうか。
一般家庭の消費量を遥かに凌駕するこの急激な需要増を支えるためには、北海道が誇る再生可能エネルギーだけでは限界があるのが現実です。 ベースロード電源としての泊原発の再稼働や、苫東地域で検討が進む水素・アンモニアといった次世代技術など、あらゆる選択肢を組み合わせた「エネルギーのベストミックス」をどう実現するかが、プロジェクト成功の鍵を握っています。

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